健康コラム

糖尿病と足の病気から守るフットケア(薬局だより)

2016.06.22

近年、透析導入者や糖尿病患者の増加に伴い、糖尿病合併症の進行、動脈硬化性疾患の併発などを背景に糖尿病性足潰瘍や壊疽などの糖尿病足病変(Diabetic Foot)に罹患する患者が急増し、年間約3,500人が下肢切断を余儀なくされています。非外傷性下肢切断の原因の過半数が糖尿病足病変によるものです。足切断を回避するためには、「フットケア」知識の普及だけでは不十分であり、足病変ハイリスク患者への重点的なフットケア指導と足処理が重要と考え、ここで「こんな人がかかりやすい」「こんなところにできやすい」「こんな症状に注意」「治療法」「フットケアのポイント」「靴の選び方」などを紹介します。
■糖尿病性足病変とは?
糖尿病による神経障害で足の知覚神経が悪くなり、足に傷がついても気づかず放置しひどくなって潰瘍や感染症を伴って足が腐る(壊疽)という症状になってしまう病気です。ここで糖尿病性神経障害について解説します。
■糖尿病性神経障害
 血糖値が上昇し、それが乱高下すると、手足の自発痛(穿刺痛、電撃痛)・ピリピリ・ジンジンする異常な感覚、時には激痛が走ったり、足がつることもあります。痛みの特徴は、左右対称性で夜寝静まるころからひどくなります。これらは、繊細な神経線維が高血糖で痛めつけられている症状です。それを放置し高血糖が続くと、神経が次第に変性し刺激を伝えなくなってしまいます。但し糖尿病そのものを治療すれば治ります。
■傷ができやすいところ

ashi

■足病変の原因
靴ずれ、タコ、魚の目、深爪、やけど、すり傷、切り傷 、皮膚の乾燥・ひび割れ
■なりやすい人の特徴
(1)男性
(2)糖尿病罹病期間が長い
(3)血糖コントロールが不良
(4)喫煙
(5)高度の神経障害
(6)動脈硬化がありASO(閉塞性動脈硬化症)を合併
(7)高齢者
糖尿病による足の病気は治りにくく、繰り返し発症し、切断率は増加傾向
■主な症状
・足の指の変形(ハンマーのような形)
・爪の異常
・関節の変形
・足の色の変化
・皮膚の異常
・皮膚感染の有無
・神経障害の程度(アキレス腱反射、振動覚)
・足の動脈の拍動
■治療
安静が必要。軽症の場合でもなるべく歩かないように心掛け、まず血糖をコントロールすることが重要。重症感染症併発時はインスリンを頻回注射するか持続点滴。局所処置、感染症治療、血流障害治療、外科的治療とあります。最近では「マゴット治療(蛆虫治療)」も試みられています。
■フットケアのポイント(日常生活の留意点)
(1)血糖コントロールに気をつける
(2)禁煙
(3)足を観察し、いつも清潔に
(4)爪は深爪しないようにし、いつもきれいに
(5)正座などの姿勢を避ける
(6)火傷に注意(夏の砂浜、風呂には手ないし水温度計ではかってから入浴、暖房器具や携帯用カイロ)
(7)靴下をはきましょう
■靴の選び方
・靴は足のサイズが大きくなる夕方に選びましょう
・足の甲や足底にフィットし、つま先に余裕のあるもの
・靴底は広く、安定感があるもの
・調整可能なひも靴が便利
・新しい靴は毎日10~15分はきならすことが大切(長時間はくのは、1~2ヶ月後にしましょう)
・ランニングシューズは「魚の目」の防止に役立ちます
■靴下の選び方
・通気性のよい素材(柔らかく、吸湿性のよいもの)
・足を締めつけないもの
・足にトラブルのあるときは白色か淡色の木綿をはきましょう
・毎日はきかえましょう
<まとめ>
糖尿病足病変は発見・治療が遅れると重症化し切断を余儀なくされることも多く、たとえ治癒しても再発率がとても高いので下記のことに注意してください。足の定期的診察とリスクの評価非潰瘍性の皮膚病変の治療自分にあった靴選び、調整患者・家族へのフットケアの指導 以上のことに注意して、足を大切にしましょう。病気を早期に発見することが治療の第一歩です。